胡蝶蘭 植え替え

花が終わった胡蝶蘭の植え替えは楽しい

もし、花を咲き終えた胡蝶蘭を捨てたとしたら、花の美しさを楽しんだ想い出が残るだけでしょう。
それに対して、花の終えた胡蝶蘭を植え替えてあげれば、植物と人間が小さな命を共に生きる、ささやかながら深い歓びをともなった楽しみが生まれます。

なんと、捨てるより植え替えるほうがカンタン!

胡蝶蘭はもともと、熱帯林の高木や岩石に着生している植物ですから、栄養分や水分をあまり必要としないで生きながらえることができる、強い生命力をもった花といえます。
花を咲き終えて、長い花茎と肉厚の葉だけになってから、花茎を30~40cmくらい残して切ってあげれば、切口に一番近い節のところから新しい芽を吹きだします。
あるいは、花茎を根もとから切ってあげれば、葉と葉の隙間から新しい芽が出てくることもあります。
そこで想像してみてください、胡蝶蘭を捨てるには、何をすることが必要となるのかを。
花を咲き終えたあと、支柱を外して花茎を切り、解体して支柱と留め具と受け皿を不燃ゴミとし、花茎と葉と根と水苔を生ゴミとし、陶器の鉢と土は役所に電話して特別回収してもらうか、それとも民間の有料回収業者がやってくるのを待つか、住んでいる地域によって対応はいろいろ異なるようです。
植え替えも、解体まではやることが一緒ですが、そのあと根まわりを整理し新しい水苔で包んであげるだけで終了、というところが違います。
どちらが大変でしょうか。
パーツを分別する必要も、役所に問い合わせる必要もない植え替えのほうが、ずっとカンタンだと思いませんか。

植え替えの仕方に2つの方法あり

花を咲き終えた胡蝶蘭を植え替える楽しみは、新しい花が咲く期待だけではないでしょう。
花が落ちた胡蝶蘭は、生長の階段を1段登り次のステージに進んだだけで、死んではいません。
植え替えれば、この螺旋階段を輪廻のようにめぐりめぐって、また花の時期がやってくるのです。
植物と人間が小さな命同士、共に生きる歓びこそ、植え替えをする原動力ではないでしょうか。
その先に、ともに生きた証としての花が咲く、それだけのことなのかもしれません。
だとしたら、花は枯れて落ちても一所懸命生きている胡蝶蘭を植え替えて、おもいっきり楽しんでみませんか。

胡蝶蘭の植え替えには2つの方法があり、目的もしくはゆとりの有無によって花茎を切る位置が変わります。
一方は、時間と粘り強さが必要ですが、胡蝶蘭を株ごと力づけ、強い花茎を芽吹かせ、多くの大きな花を何年も楽しみたいかた用の植え替えです。
他方は、時間も手間もかけることなく、多少花が小さかったり少なかったりしますが、確実にもう一度楽しみたいかた用の植え替えです。

手間をかけても多くの大きな花を何年も楽しむ植え替え方法

[概要]花が半数残っているころ、花茎を根もとから切り取ります。

① 株の大きさに見合った素焼きの鉢と、まえもって水に浸した水苔と、園芸用のハサミと、適当な花瓶を準備しましょう。
園芸用のハサミは水洗いをすませておき、実際に使うときには火にかざして滅菌します。
切り口から悪性の菌が侵入して病気になってしまうことは、案外多いものです。

② 花がまだ半分くらい残っているころ、花茎を支えている支柱を取りはずし、花茎を根もとから園芸用のハサミで切り取りましょう。
花茎は何本あってもすべて切り取り、からの花瓶に挿しましょう。
水なし状態で、切り花として楽しめます。※1

③ 表面の水苔をのけて、一株ずつ個別に入ったポリポットごと、化粧鉢から取り出しましょう。
それぞれ一株ずつ順番に、以下の作業をします。

④ ポリポットから株を抜き出し、根にからみついた古い水苔や用土などを、手でこまめに取り除きましょう。
すべての水苔と用土を取り去って、根を丸裸にします。

⑤ 裸にした根のうち、茶褐色や黒色に変色している傷んだ部分を、園芸用のハサミで切り取りましょう。
健康な根は、濃い薄いの違いはあっても必ず緑色をしています。
少しくらいやりすぎても何ら心配ありませんので、傷んでいる根は思い切りよく裁断しましょう。
黄ばんだ葉があれば、傷んでいる証拠ですからそれも切り取ります。

⑥ 水に浸しておいた新しい水苔を、ギュッとしぼってから根に巻きつけてゆきましょう。
はじめに、水苔をお団子状に丸めて、そのお団子をくるむように根を巻きつけ、その上からさらに水苔で包みます。
水苔はなるべく多めに、素焼きの鉢にやっと入るくらいまで巻きましょう。

⑦ ほどよく巻きおえたら、むりやりと思えるくらいぎゅうぎゅう詰めに、素焼きの鉢の中に押しこみましょう。
株全体がまっすぐ垂直になるよう、調整しながら指の腹で押しこめば完成です。

⑧ この植え替え作業日を起点として、以降7日~10日のインターバルをとって、コップ1杯の水やりを続けてゆきましょう。

※1 胡蝶蘭は、切り花としても大変花持ちの良い重宝な花です。
普通の切り花と違い、花瓶に水を張る必要はありません。
転倒しないよう水をはってももちろん構いませんが、花持ちにはまったく影響がありません。
鉢物のときと同じように、置き場所、日当たり、温度湿度といった環境管理に気づかってあげれば、長く楽しむことができます。
ただし、この場合の切り花は、あくまで散りぎわの残花ですから、過度の期待はしないでください。

★ 花茎を根もとから切り取ったことで、新しい花茎の芽が発芽しにくくなります。
植物も大きな手術のあとは、疲労回復して鋭気をやしなう必要があるからです。
1年たっても芽が出ないかもしれません。
でも辛抱してください、3年目に芽が出ることもしばしばあるのが、蘭の世界ですから。
その分、芽が出たときは太くて丈夫な花茎となり、大きめの花が数多く咲くことでしょう。

手間をかけずにもう一度花を楽しむ植え替え方法

[概要]花が間もなく散りおわるころ、花茎の下から三節目のすぐ上を切り取ります。

① 株の大きさに合わせた素焼きの鉢と、まえもって水に浸した水苔と、園芸用のハサミとを事前に準備しておきましょう。
園芸用のハサミは水洗いをすませておき、実際に使うときには火にかざして滅菌します。
切り口から悪性の菌が侵入して病気にかかってしまうことも、案外多いのです。

② 花がおおかた落ちて、残りが1~2輪程度になったころ、花茎を支えている支柱を取りはずし、花茎の根もとから三番目の節上2cmのところを園芸用のハサミで切りましょう。
何本あっても、すべての花茎を同様に切ります。

③ 表面の水苔をのけて、一株ずつ個別に入ったポリポットごと、残した花茎を傷めないよういたわりながら、化粧鉢から順次取り出しましょう。
それぞれ一株ずつ順番に、以下の作業をします。

④ 花茎を残した株をポリポットから抜き出し、根にからみついた古い水苔や用土などを、手でこまめに取り除いてゆきましょう。
すべての水苔と用土を取り去って、根を丸裸にします。

⑤ 裸にした根の中で、傷んでしまった部分は茶褐色や黒色に変色していますから、園芸用のハサミで切り取りましょう。
健康な根は、濃淡さまざまありますが一様に緑色をしています。
少しやりすぎても何ら心配ありませんので、傷んで変色した根は思いきって断裁しましょう。
黄ばんだ葉があれば、傷んでいる証拠ですからそれも切り取ります。

⑥ 水に浸しておいた新しい水苔を、手でギュッとしぼってから、根に巻きつけてゆきましょう。
はじめに、湿った水苔でお団子状の丸いかたまりを作り、その丸いかたまりをつつむように根を巻きつけ、その上からさらに水苔でくるみます。
水苔をなるべく多めに使用して、素焼きの鉢にやっと入るくらいまで巻きましょう。

⑦ ほどよく水苔を巻いたら、むりやりと思えるくらいぎゅうぎゅう詰めに、素焼きの鉢の中に押しこみましょう。
花茎と株全体がまっすぐ垂直になるよう調整しながら、指の腹を使って押しこめば完成です。

⑧ この植え替え作業日を起点として、以降7日~10日のインターバルをとって、コップ1杯の水やりを続けてゆきましょう。

★ 3節ほどの花茎を残したことで、新しい花茎の芽が一番上の節のところから萌え出る確率が、非常に高くなるのです。
その花茎の芽がすくすく伸びて、花茎に花芽が芽吹く確率も高くなります。
ただし、成功の確率が高いことに反比例して、花茎がじゃっかん細めで、花形がこころもち小さく、花数がちょっと少ないかもしれません。

植え替えの時期はいつが良い?

自然状態で育つ胡蝶蘭は、晩秋に花芽をつけ冬から早春に開花します。
一般のかたになじみのある花としては、シクラメンなどがちょうど同じサイクルで生長します。
じっさいには、花屋で胡蝶蘭を一年中見かけるでしょうが、それは需要にあわせて温室栽培しているからです。
日本で開花している胡蝶蘭はすべて、たとえ専門知識や専用施設のない個人のかたが育てたものであったとしても、温室栽培または温度管理栽培したものであることは間違いありません。
残念なことに日本では、どこであっても地植え的な自然放置状態で、胡蝶蘭がすくすくと生育し花を咲かせることのできる好適地がないからです。
胡蝶蘭にとって日本の気候環境は、真夏も真冬も文字通り、死ぬほど厳しい状況をつきつけてくる手強い相手なのです。
ですから、生きていくために必要な作業とはいえ、胡蝶蘭の植え替えに関しては、株にストレスのかからない季節にしてあげることが、大切になります。
では、胡蝶蘭にストレスのかからない季節とはいつなのでしょうか。

ずばり、それは春、卯月(4月)のころとなります。
自然状態にある胡蝶蘭本来の開花が冬から早春なので、植物が一番精力と緊張をしいられる花の時期をすぎた4月は、胡蝶蘭にとって心身ともにリラックスできていますので、植え替えの好適期といえるのです。
なんらかの事情で4月の植え替えがムリなときは、梅雨の長雨による困難がなければ、つづく5月、6月でも良いでしょう。
また、夏の残暑がおさまって、しかも初冬の冷気が発生するまえの秋、神無月(10月)のころも植え替えできます。
我が国の夏は近年ますます高温化して、胡蝶蘭にとっても厳しい環境になっていますので、植え替えはひかえましょう。
また冬は、花を咲かせようとする季節で根は休眠期にあたりますので、この時期の植え替えは大きなストレスとなり、育とうとする勢いをそいで最悪の場合枯らしかねませんからやめましょう。

植え替えに最も適した植えこみ材とは?

植えこみ材とは、植物を鉢植えする際に鉢の中に入れて植物の躯体を支え、水分や養分を備蓄して根を生かす用土類のことです。
蘭類に適した植えこみ材としてとくに有名なものに、水苔、バーク、軽石、ひゅうが土、鹿沼土、およびそれらの混合物などがあります。
この中で胡蝶蘭に適した植えこみ材というと、水苔とバークの2つがあげられます。
かつては胡蝶蘭といえばすべて水苔が使われてきましたが、近年はバークを使う生産者や愛好家も増えてきました。

水苔は、山岳地域にある高層湿原を構成し、泥炭の材料となっている貴重な植物を、刈りとって乾燥させたものです。
保水力が高く、軽くて扱いやすいので使用するには重宝ですが、かぎりある貴重な植物ですので地球環境保護の観点から見たとき、次第に利用を控えざるをえない植えこみ材といえそうです。

バークは、針葉樹や広葉樹の樹皮を切り砕いてチップにしたもので、3cm四方の大きなものから粉状のものまで、さまざまな大きさと樹種があります。
水苔と比べて保水力が低くやや重いですが、建築家具材などで不要とされる廃棄樹皮の有効利用であり、使用後は腐敗分解させたり燃えるゴミとしたりできるので、地球環境にやさしいのです。

そして何よりも、胡蝶蘭の故郷である熱帯林の大樹の上の生活環境に、もっとも近い状態がバークであるといわれて以来、バークに人気が移行しているようです。
樹上の自然状態の蘭の根は、樹皮や木くずなどにからんで着生しているわけで、明らかにバークを植えこみ材にするのが、一番似かよった環境の再現になるといえます。
胡蝶蘭の根は樹皮や岩肌にしがみついて、身をさらして生きるのが好きなのです。
始終水分にふれているよりも、風にあたってさらさら乾燥して伸びてゆくほうが性にあっているのです。
鉢植えでも、いきいきして強くたくましい根ほど鉢から外に飛びだして、つる性植物みたいに所かまわずどこまでも、我がもの顔に伸びるのはそのせいだったのです。

バークは自然状態に近い植えこみ材です

水苔は、ホームセンターなどで簡単に入手でき、軽くて扱いやすくて保水力が抜群で、太い繊維に植物の根がからみやすいことが最大の特長です。
ただし、胡蝶蘭の原種が着生する大樹や岩石という環境には水苔のようなものは稀にしかないこと、水苔を採取し続けることは地球環境保護に反すること、が難点になります。

それに対して、大樹や岩石という環境に頻繁にみられるものとして、折れたり割れたりした木の枝や木くずがあります。
これにたいへん近いものとして、樹皮を剥いで砕いてチップにした、環境にやさしいバークが注目され人気を博しています。
ただし、水苔にくらべて保水力が低く(実はこれこそが着生環境なのですが)、少し重く、まだ販売する店が多くないので入手しにくいことが弱みです。

この特徴の違いが原因で、胡蝶蘭が育つ自然環境により近いバークを使う植え替えは、水苔での植え替えと似ているところ以上に、そうでないところが多々あります。
そこで、人気急上昇中のバークによる植え替えをご紹介しましょう。

バークを利用したカンタンな植え替え方法

[概要]花が半数残っているころ、花茎を根もとから切り取ります(水苔と同条件です)

① 株の大きさに見合ったプラ鉢と、鉢底ネットと、径1cmくらいのMサイズのバークと、園芸用のハサミと、割り箸または同等の棒と、適当な花瓶を準備しましょう。
園芸用のハサミは水洗いをすませておき、実際に使うときには火にかざして滅菌します。
切り口から悪性の菌が侵入して病魔におかされてしまうことは、意外に多いものです。

② 花が落ちはじめてからしばらくして半分くらい残ったころ、花茎を支えている支柱を取りはずし、花茎を根もとから園芸用のハサミで切り取りましょう。
何本あってもすべての花茎を切り取り、からの花瓶に挿します。
水なしのままで、切り花としてまだまだたっぷり楽しめます。

③ 化粧鉢をおおう水苔をのけて、一株ずつ個別に入ったポリポットごと取り出しましょう。
それぞれ一株ずつ順番に、以下の作業をします。

④ 株をポリポットから抜き出し、根にからみついた古い水苔や用土などを、こまめに手で取り除きましょう。
すべての水苔と用土を取り去って、根を丸裸にします。

⑤ 裸にした根に、茶褐色や黒色に変色した傷んだ部分があれば、園芸用のハサミで切り取りましょう。
健康な根は、多少色味が違っても必ず緑色です。
少しくらいやりすぎでも何の心配もありませんので、傷んだ根は思い切りよく切断しましょう。
黄ばんだ葉があるときは、傷んでいる証拠なのでそれも切り取ります。

⑥ プラ鉢の穴に鉢底ネットを敷き、深さの5分の1くらいまで鉢の中にバークを入れましょう。
その上に胡蝶蘭の株を入れ、株の中心が鉢の中心になるよう位置取りし、かつ株が垂直になるようバークを調整します。

⑦ その上からバークを少しずつ入れて、根の周りをバークで敷きつめてゆきましょう。
株全体の垂直を保ちながら、バークをどんどんつめてゆき、割り箸や棒を使って押しこんだり、プラ鉢をトントン叩いたりして隙間を埋めます。
根を傷つけないよう優しくあつかうことも大事ですが、それ以上にバークの隙間をなるべく作らずビッシリつめこむことが大切な要素となります。

⑧ バークが、プラ鉢の縁下2~3cmくらいのところまで敷きつめられたら、完成です。
水は必要ありません、むしろ与えないでください、傷みやすくなります。

⑨ この植え替え作業日を起点として、以降7日~10日のインターバルをとって、コップ1杯の水やりを続けてゆきましょう。

2年に1度は植え替えよりも鉢増しを

胡蝶蘭を育てはじめたら、2年ごとの植え替え前には必ず鉢のようすを確認しましょう。
鉢の中がパンパンになっていたら、植物も人間と同じでストレスが蓄積され、のびのび健康に育たない状態であるということです。
胡蝶蘭は自由奔放に、文字通り天上天下唯我独尊させてこそ、すくすくと力強く育つものです。
もし緑色の元気な根が、勢いよく張りめぐったあげくに、外にはみ出すようにして暴れていたら、鉢増しをしてあげましょう。
育ちざかりの子供が、一昨年の服ではきつくて着られなくなったのと同様に、生長いちじるしい胡蝶蘭はもう現状の鉢ではきつくて入っていられなくなったのです。
このとき、一回り大きめの鉢に植え替えてあげれば、鉢に合わせて一回り大きな胡蝶蘭に育ちます。
これを鉢増し、といいます。
丈夫で健康な胡蝶蘭の育成には、この鉢増しが有効です。

ということで、ここからは鉢増しの仕方を紹介しましょう。
バークを使用する場合は、現状より一回り大きいプラ鉢か、ポリポットを選びます。

① 植え替え前の鉢より一回り大きなプラ鉢と、鉢底ネットと、径1cmくらいのバークと、園芸用のハサミと、割り箸または同様の棒と、および粒状肥料(例えば「マグァンプK中粒タイプ」)を準備します。
ハサミはきれいに洗い、使用するときは火にかざして滅菌しましょう。

② 花茎を前もって切ってある株を、古い鉢から取り出します。

③ 新しいプラ鉢の内側底の穴に、鉢底ネットを置き、その上にバークを一にぎり敷きつめます。

④ 敷きつめたバークの上に、元肥として粒状肥料を一つまみ(10粒くらい)ふりかけます。

⑤ その上にさらに、バークを半にぎり敷きつめて、先にふりかけた肥料が隠れて見えなくなるようにします。

⑥ 取り出しておいた②の株を、何ら手を加えず、根をいじくったりせず、そのまま新しいプラ鉢の中に入れ替えます。

⑦ プラ鉢と株の隙間に、バークをたっぷり入れてから、鉢をゆすったり、割り箸でつついて空間がなくなるまでならしたら、完成です。

⑧ この鉢増し作業当日を水やりした日と起算して、以降7日~10日のインターバルでコップ1杯の水やりを行いましょう。

植え替えに肥料は必要?

普通に元気な胡蝶蘭であれば、一年中肥料をあげることがなくても、自ら立派に育つのが胡蝶蘭の逞しくて頼もしい特長の一つといえます。
しかし、植え替えを経験し、新しい花茎を芽吹かせ、その先にいくつもの花芽を期待するまでに本腰を入れるようになったら、肥料を無視することはできません。
胡蝶蘭の植え替えをするときに、根が元気に育っているようでしたら、緩効性の固形肥料を少しだけ施肥することをお奨めします。

施肥の際に注意することは、固形肥料を蒔いたら必ずその上にバークか水苔を敷きつめ、それから胡蝶蘭を入れるということ、つまり肥料と根が直接触れないようにすることが絶対条件です。
緩効性とはいえ、強い栄養分に縁のない根にとって肥料にふれるのは、劇物にふれるくらいの痛手となるので、気をつけましょう。
もし、植え替えのとき根に元気がないようなら、施肥はいさぎよく控えましょう。
弱っているときの根は栄養分を吸収しようとしませんし、その必要もないのです。
そんなときは、人も植物も同じですから、ゆっくり休ませてあげましょう。

植え替えに一番適した鉢の種類

胡蝶蘭は本来、樹や岩に着生している植物ですから、その環境に似せた植え込み材として、バークや水苔が利用されるわけです。
おなじように、胡蝶蘭の置きかたは軒下にぶら下げたり、柱の上方にくくり付けたり、高い棚の上に載せたりするのが理想的です。

では、そんな胡蝶蘭を入れる鉢は、どのようなものが適切なのでしょうか。
正解は、どんなものでもお気に入りの鉢が一番いい、です。
愛着が、より一層増すはずだからです。
ただし、選んだ鉢が素焼き鉢なら植え込み材には水苔を、選んだ鉢が釉を掛けた陶磁器鉢やプラ鉢なら植え込み材にはバークを、それぞれ組み合わせてください。
素焼き鉢は透水性が高いので、保水力が高い水苔と相性が良く、釉の掛かった陶磁器鉢やプラ鉢は透水性が低いので、保水力が低いバークと相性が良いからです。

鉢と植え込み材の特性を知り、各々の相性をも理解したそのうえで、お気に入りの鉢に胡蝶蘭を植え替えて育てる・・・そこは色彩、立体、物語、生命、すべてが詰まった総合芸術の世界です。
最高の贅沢を味わうチャンスです。