胡蝶蘭 水やり

どんな水をどれくらいやればいい?

ほかの鉢植え植物とくらべて、胡蝶蘭は水やりが特に大切です。
ただしそれは、やたらと神経質になって、きっかり水やりをしなければ枯れてしまという、繊細でめんどうな世話のことではありません。
じつは、胡蝶蘭は水やりを我慢することが、とても大切な鉢植え植物なのです。
大きな花が咲いているときには特に、花や葉の肉感とかみずみずしさとかに惑わされて、早め早めに水やりをしないといけないかのような、強迫観念におそわれることがあるようです。
しかし、その肉厚な植物の特質は、砂漠にそだつサボテンと同様の、水のない環境に長く耐えられるというユニークなものです。
むしろ、根はひっきりなしに水に恵まれるのが、苦手なくらいなのです。
ですから胡蝶蘭は、水分でいつも湿っている土への地植えができません。

胡蝶蘭の故郷は、東南アジアを中心とする熱帯林の樹上や岩上です。
雨季でも、スコールの雨は降ってはすぐに上がりますので、樹の幹伝いのしずくで濡れた根は、風が吹けばじきに乾いてしまう環境なのです。
まして乾季ともなれば、数ヶ月間ほとんど雨なしの樹上ぐらしをしいられます。
湿気は好きですが、年がら年じゅう水に浸かっているのは好きではない、ということになります。
このような環境を整えてあげれば、胡蝶蘭は快適にすごすことができる植物なのです。

ここまで述べてきましたことをふまえて、胡蝶蘭への水やりについての結論をだせば、次のようになります。
水はただの水でよく、水道水でも、雨水でも、川水でもかまいません。
肥料などを加える必要はありません。
水をやるときは常に、一株につきコップ1杯(150~200cc)を、7日~10日に1回のインターバルであげましょう。
乾燥しがちな季節にはインターバルを縮め、逆に湿気がちな季節にはインターバルを伸ばします。
できるなら、ふだんから実際に自分の手で植え込み材にさわってみて、乾いていることを確認したら水やりをする、という習慣にすることが理想的といえます。

やってはいけない水

熱帯林の樹上や岩上で生きる胡蝶蘭は、栄養分をそれほど必要としていません。
たいした栄養などなしで生きてゆける体力を持っているからこそ、樹上に着生しているともいえます。
そのような性質をもつ胡蝶蘭ですから、栄養のとりすぎは、かえって負担になってしまいます。
ふつうに健康な胡蝶蘭であれば、肥料などはあげず、水だけをあげていれば充分であり、それだけですくすく生長してゆけます。
また、蘭の肥料は生長期に生長を促進する効果のあるもので、休眠期や体力が劣っているときに力を充電したり回復を助ける効果があるものではありません。
ですから、ストレスが溜まって傷んでいるときや、休眠期である冬場には肥料をやってはいけません。
そのような肥料は役に立たないのではなく、むしろ積極的に胡蝶蘭の生命をおびやかすことになるからです。

つまり、胡蝶蘭の水やりで、やってはいけない水とは、液体肥料などを希釈した栄養価の高い水のことなのです。
インターバルを守りながらする、ふだんの水やりなのに、肥料をくり返しくり返しやりすぎると根から傷んでしまい、最悪の場合は株が枯れてしまいますので注意しなければいけません。
なんら変哲のないただの水こそ、一番良い水なのです。

やってはいけない水やり

贈り物としていただいた胡蝶蘭はほとんどの場合、化粧鉢とよばれるやや大型の陶器製の鉢に入って、きれいなコート紙でラッピングされています。
そして、花の咲いた花茎が3本とか5本とか、複数本立っているのが一般的です。
このような胡蝶蘭に水やりをするときには、コップであれ水差しであれ、根もとあたりに漠然とやってはいけません。
水やりをするときには、たとえば3本立ならコップ3杯分の水が必要となりますが、それは単に合計3杯の水をやればいいわけではないのです。
花茎1本ずつ、つまり一株ごとに1杯ずつの水をやらなければ、やったことにならないのです。

化粧鉢の上をおおっている水苔を、株を傷めないようにそうっと取り除いてみましょう。
その下にはほとんどの場合、一株ごとにポリポットに入って小分けされた胡蝶蘭があるはずです。
したがって、漠然と水やりをしてしまうと、特定の株には多めにやり過ぎ、他の株には少なめにしかやらないという、マダラ現象が起きかねないのです。
まして、ポリポットとポリポットの隙間に落ちた水があれば、その分は意味のない水やりだったことになります。
かならず一度はポリポットの位置を確かめ、ポリポットをはずすことがないよう、根もとに忠実な水やりを心がけてください。

冬場の水やりにも、注意事項がありますので、覚えておいてください。
冬場はどうしても夜から朝にかけて冷えこみますから、夕方以降には水やりをしないようにしましょう。
気温がもっとも下がる明け方の時間帯に、鉢の中にたくさんの水がとどまっていると、その水が冷たくなりすぎて、根に悪さをすることになりかねないからです。
冬場の水は、できることなら自分でふれて冷たすぎると感じない、肌温くらいのぬるい水をあげたいものです。
かといって、絶対にお湯であってはいけません。
お湯をあげたら、胡蝶蘭は即死です。
これこそ、やってはいけない水やりの標本みたいなものですね。

水のやり過ぎとやらな過ぎは、どっちが良い?

どちらも、「過ぎ」が付くのですから、良いはずがないのですけれども、あえて言うならやらな過ぎのほうがいくぶんかましです。
胡蝶蘭の原種がそだつ環境を思い出せば、理由ははっきりしています。
数ヶ月間の乾季にも耐えられる胡蝶蘭からしてみれば、水のやらな過ぎというくらいの悪条件は、問題にすらならないかもしれません。
もちろん、やらな過ぎの程度は、常識を超えない範囲という条件つきですけれど。

いずれにしましても、胡蝶蘭の根は水のやり過ぎによる根腐れで枯らしてしまうケースが圧倒的に多く、水のやらな過ぎによる乾きで枯らしてしまうケースを大きく上まわるのが実情です。
くれぐれも水をやり過ぎないよう、自制してください。

たとえば、贈り物としていただいた胡蝶蘭が会社にあって、花が咲いている時期だけ飾って楽しむというようなケースであれば、根もとへの水やりは一切せずに、毎日花と葉を裏側から霧吹きで濡らしてあげるだけというやりかたも大変有効な管理方法です。
それくらい、胡蝶蘭の根には水をやり過ぎてはいけないことを念頭に、お世話してください。

水やりの頻度と1回にやる量

胡蝶蘭に水やりをするときの、頻度と量は非常に気になることがらです。
花が咲いている期間も、花のない期間も、基本的に水やりの頻度と量に違いはありません。
1回にやる水の量は一株につきコップ1杯、水やりのインターバルは7日~10日に1回、を基本とします。
特に、季節に応じた乾燥具合や湿気具合にあわせて、水やりを調整するような場合には、1回にやる水の量をコップ1杯に固定して、インターバルで調節するのが便利です。
あるときは水の量を変え、またあるときはインターバルを変え、ときには両方一緒に変えるなど、不規則に変更しているとやがて何が何だか解らなくなってしまいますから。
夏の高温で水が蒸発しやすいときや、冬の乾燥しがちなときにはインターバルを短くし、梅雨の時期や秋の長雨で湿気がちなときにはインターバルを長くするなどして、対処しましょう。

かつては、冬場は日射時間が少なく低温のため水持ちが良いとされ、インターバルを長くする調節が図られたものでしたが、最近では暖房が強く効いた部屋に置かれることが増えて乾燥しがちなため、インターバルを短くする調節が必要になっています。
時代とともに人間の生活環境が変化し、その変化が栽培植物の育て方にまで影響を及ぼしているのですから、人間と植物の共生は微妙で深遠ですね。

水やりをする器の話

室内に飾って花を楽しむ胡蝶蘭の場合、水やりするときに使う器具に、特別な仕様の製品は必要ありません。
ありきたりのコップで充分役割を果たしてくれますし、考えようによってはコップがベストかもしれません。
1回の水やりでは、一株当たりコップ1杯水をやるのですから、コップを使えば目盛りで量をはかる手間もなく、注ぐときに量の加減を気にせず全部やれますからカンタンです。
こだわりがあって、お気に入りのおしゃれな水差しを使いたいという人は、水の量を計測する手段として一旦コップに入れた水を水差しに入れ直して利用するとカンタンです。

おしゃれという意味では、陶器の片口を水差しに見立ててご使用されているのを拝見したことがありますが、渋めの良い趣味だと好感がもてました。
ただ、いずれの場合も一株ずつ水汲み作業が必要なので、人によってはめんどうに思うかもしれませんね。
そんなめんどうを解消する水やり方法として、料理用の1ℓ計量カップをご使用されているのを拝見したこともあります。
これなら、3本立はもちろん、5本立まで1度の水汲みで対応できるので、時間重視、効率優先を考えるかたには重宝ですね。
でも、わざわざそれだけのために買い求めて利用するほどのものかと問われると、答えられません。

胡蝶蘭の水やり史上、一番感心させられたのは、ペットボトルを水差しとして利用した方法です。
500㎖のペットボトルなら、3本立にはぴったりですし、3分の1ずつでしたら目分量でも大きな誤差なく水やりできるのではないでしょうか。
どうしても誤差が気がかりなかたには、ものさしで測って線を引いておくことをお奨めします。
この方法を応用すれば、1,000㎖のペットボトルで5本立にも対応できそうです。

これが上手な水やりの手順

その1

最初に、胡蝶蘭が植えられた鉢の底に、水が溜まらない状況を作ってあげましょう。
セロハンやビニール加工の包装がされている場合は、包装に穴をあけるか取り去ってください。
受け皿を敷いてその上に、穴をあけて包装されたままの鉢、またははだかの鉢を置きましょう。

その2

ところで、水やりをするのは、植え込み材である水苔やバークを親指と人差し指でこすってみて、完全に水気がなくなっていることを確認できたときですから、植え込み材が乾いていることを確かめましょう。
これが、一般的にはおよそ7日から10日に一度の割合で訪れると、いわれているわけです。
本当なら、植え込み材の上面部分だけでなく、ポリポットの中を少し掘ってみて、ポリポットの中央あたりの水気を調べて、乾いていることを確かめるのがベストです。
そのあたりまで乾いてから水をあげるタイミングで充分間に合いますし、そのほうが胡蝶蘭自身も快適にすごせるからです。

その3

次に、一株当たりコップ1杯の水を注ぎやすい器に用意し、葉の下の根もとに確実に(ポリポットから外へ絶対にはずさないで)そそぎ入れましょう。
贈答用の胡蝶蘭はたいがい、大鉢に一株ずつポリポットのまま寄せ植えしていますから、ポリポットの中にそそぎ入れないと、水やりしたことになりませんので注意しましょう。
株が複数あったら、コップ1杯分ずつの水を、すべての株に順次そそぎ入れます。

その4

最後に、注いだ水はしばらくすると鉢から出てきて、受け皿に溜まりますから、出てくるかぎりすべての水を捨てます。
受け皿に水が溜まったまま残っていたのでは、鉢の中に水が溜まっているのと何ら変わりませんのできわめて危険です、注意しましょう。
これで、水やりの1サイクルが終了です。

なお、夏場の水やりの注意事項として、室温の高い日がつづくときは、一株当たりコップ1杯の目安を、じゃっかん多めにしても良いということがあります。
ただし、植え込み材の乾き具合を確認しながら、水の量で調節するのではなく、水やりのインターバルを短くすることで調節するほうが、失敗が少なくすみますのでこちらをお奨めします。
また、冬場の水やりの注意事項は、季節的に乾燥しがちなうえ、暖房機の使用によってさらに乾燥が進みますので、一株当たりコップ1杯の目安を、じゃっかん多くしても良いということです。
ただこちらも、植え込み材の乾きを確かめながら、水やりのインターバルを短くするほうが、失敗が少なくすみます。

胡蝶蘭の根は、季節に関わりなく、始終水浸しになっていることには耐えられません。
胡蝶蘭の管理において、最も失敗が多いのは水のやり過ぎによる根腐れである、ということを肝に銘じておきましょう。
水やりの頻度が高すぎる傾向が見られます。